音のマスターともいえる海煌さんからは10年以上も前に石笛(磐笛)を聞かされた事がありました。そのインパクトは強烈で、2〜3メートル離れた所から吹く音は耳で聞くというより、頭蓋骨とその中の脳ミソで受け止めるといいったほうが近い感覚なのでした。ビィ〜〜ンと響く音に圧倒され、普通ではあり得ない音の感覚を受けたのでした。正面に発信元の奏者がいるのに聴こえるのは後ろからで脳を直撃するような所がありました。
あまりにも強烈な体験でしたので、海煌さんが帰ったあと無性に石を探したくて犀川へ行ったくらいです。感動でした。なるべく近場の上流で探す事2時間ほどだったかに、2個ほど穴の開いた石を見つけてきました。(写真にも写っています)はじめはなかなか見つからないのでした。
その時海煌さんから、一つ石笛をプレゼントされ(これも写真に写っています)この石笛はとても鳴りやすい穴がキレイに丸く開いています。しかし私の拾ってきた石は小さめの穴で、当時なかなか鳴らすのが難しいと感じていました。

その後、4年程前、陶芸教室に参加した時にテーマとして笛を焼き物でつくろうと、何個かつくりました。(一部写真に写っています)その時には自然の石笛を探すことはなくプチブームは終わっています。
今回の磐笛体験は、瑞亀さんから技法を教えてもらった訳ではないのですが、真近で音を聞けたことがなんといってもよかったです。音を途切れさせないというのも説明抜きで聞けたことがよかったです。ディジュではなんとか出来る循環呼吸も小さい穴の石笛・磐笛では出来ないだろうと思っていたのでしたが、目の前で吹いているのを長時間聞いていると、やればできるということを自然に教えてもらっていたようにも思いました。
当日は最後の方にディジュで少しだけセッションに参加させていただいたという感じでした。瑞亀さんのパワーは凄いものでした。一般的な年齢からするととても思えないくらいのパワーなのです。やはり呼吸は要なのでしょうか。音録りの後の食事の時の会話でも穏やかな調子でありつつも連続して話の途切れないところが普通じゃないほどの元気さなのでした。演奏中もその後もとっても顔色の血色がよいのです。
音のセッション・音録りが済んだある日、なにげに散歩に手取川へ向いました。久々に歩こうかと思って、河原をみると石ころがいっぱいころがっています。お、これは石笛を探さないととワクワクモードに変身し、散歩はどこの空で石笛を探し出していました。
要するに穴の開いた石を探すのですが、河原には大小含めて何万と石がころがっています。穴が開いていても大きな石だったりします。丁度持ちやすい大きさの手頃なサイズを見つけるのに集中していきました。その日はなんとか2つほど見つかりました。穴の開いている所が見つかる訳ですからこちらを向いているようにも感じます。
石探しという所と、吹いてみてどんな音がするのかという所の2つが面白いところだと思っています。10年以上前最初に犀川で見つけた石が実は今吹いてみるととてもいい音をだす石だったりしました。小さい穴だと思っていても吹き方次第で音は鳴ってくれます。1〜2ミリ程度の小さい穴だとかなりの高音が鳴ります。音量は出ませんが鳥の音に近いものがありそうです。鳥のくちばしや喉の大きさに近ければ鳥の鳴き声のような音になるはずです。
穴を探すと割とまわりに多くて、ボールペンのキャップやペットボトルなど、花瓶の口の小さいもの。吹く時の人間の口の大きさが2〜3センチとすると、口の大きさより小さければ、ほぼ全ての穴に息を吹けば音が鳴るということになります。丁度手取川で石を探していた時風が強かったのですが、風が鉄パイプの片方の開いた口にあたって、いい音を出していました。
循環呼吸も石笛でなんとなくできるということが分かりました。息を吹く時の圧を軽くできれば、できます。小さい穴ほど循環が楽にできるのでした。ほとんど普通の息をしているのと同じ感覚で音が鳴り続けてくれます。音が鳴り続けているので、息を吐いているのか吸っているのか分からなくなる様な感覚にもなりました。
石笛を吹く効能といえるのかどうかはなんとも言えませんが、ひとつ面白い体験をしました。ここ1〜2年之間に左後ろの頭の中が詰まっているような感覚があって、これって血栓だったらやばいなーと思っていました。お酒を飲むと特にその後に感覚がハッキリとしてきていたのでした。ところが、石笛を吹いてその感覚が無くなってしまったのでした。高音の鳴る石笛が効いたみたいなのです。証拠もなにもありませんが体感としては現状頭の詰まりは無くなっています。これは石笛だけというより他に身体にいいことを含めた総合的な効果があったからかもしれません。
石ころだと思っていても、みんな表情が違っていて、鳴る音も様々です。みんな個性があって一つ一つに意志があるのではと思えるくらいなのです。自然がいいのか人口で開けた穴がいいのかもなんとも言えないのですが、穴の開き方でかなり音が変わります。四角い穴だと、息があたる方向によって角度によって二重に鳴ったり、細長い穴だと高周波の音だったりしました。頭の詰まりが取れたのはこの細長い方のようです。
海煌さんが教えてくれたことで、どんな楽器もそうだけれど、石笛は何度か吹いているうちによく鳴り出すもので、初めは石自体は自分のことを鳴る石(楽器)だとは思っていないようなのでどんどん吹けばいいというのです。これは吹く人間の方にもあることで、思い込みで鳴らないと思っていても、鳴ると思えは鳴るもこともあり、吹き方を変えていくと鳴ってくれたりします。
これからどんな石笛に出会えるのかが楽しみな今日この頃です。